2016年06月09日

石巻の家 撮影日

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昨年の9月末にお引き渡しをしてから9カ月が経ちました。
無垢材を使用していますので、経年変化やその後の状況などが気になるところ。

建物が密集しているところなどは敷地めい一杯に建ててしまうと軒の出が少なくなったりしてしまいますが「軒を出す」ということはちゃんと理由があってそうなっています。
特に木造の住宅では外壁を強い陽ざしや雨から守るためにあります。
窓の上に庇が付くのも、窓枠を伝って雨水などが入り込まないようにすること、西日などの強い陽ざしで室内の温度が上がり過ぎないようにするという配慮からです。
スペック的な話になると、部屋内に陽射しを遮るものを付けるより(カーテンなど)、外側に陽射しを遮るものを取りつけたほうが遮熱になるということは環境工学の数値でも出されていることです。

撮影日は少し雨模様だった空も、午後からは晴れて青空を見ることができました。
軒に守られているので、9カ月経った木曾桧は、まだ竣工当時の色合いを残していますが、5年、10年経つごとに経年変化でシルバーグレーからチャコールグレーに変化を遂げます。
文化財などは、塗装をかけていないことが多いのですが、200年、500年、1000年と当時の木が繰り返し利用できるのはそれなりの木を使用しているからということが言えますが、街で見かける民家でも状態が良いのをよく目にします。
良く寝かせた(乾燥させた)木が使われているからだと思います。

塗装をかけた木は、また5年、10年後に塗装が必要ですが、無塗装の材は経年変化のなり行きに任せます。
あとは、建て主さんのお掃除次第。
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お庭では、小さかった子猫も立派になって、興味があるのか遠巻きに撮影を眺めています。IMGP4274.jpg
遠景には建て主さんが育てられているお野菜や苗木のハウス。田畑が広がるロケーション。
愛猫のミィちゃんが座っている下は東日本大震災の際も枯れることの無かった井戸です。
土木建設会社をされているので、建築に関わる色んな装置などを開発していらっしゃることもあって、ご縁あって設計をご依頼されてから色んなお話をお聞きすることができました。
同業に近い建て主さんからのご依頼がここ最近続いているということもありますが、私自身のステップアップに繋がっています。
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ミィちゃんは午前中はおとなしく、午後からは撮影している部屋の引き戸を開けて覗いて居たり。
奧様の話をよく聞くお利口さんです。
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食堂に面する和室は、少し薄暗いほうが陰翳が出るのでどんよりとした雲がかかり小雨が降る午前中に撮影。
L型の出窓に取り付いていた造付けの収納を撤去し、窓の荷重を支えている「まぐさ(横材)」を交換し、補強しました。
見た目が綺麗になっても、肝心な部分が治らないのであればリフォームしたとは言えません。
リフォームは見た目が劇的に変わるということで無ければ、満足されないことも多いものですが、実は見た目の意匠よりも肝心なのは見えない部分に関する補修をどうしたのか?が本来、外してはいけない大切な部分です。
家の寿命に直接関わってくる部分をどうするのか?「安くできますよ、劇的に綺麗になりますよ。」ということを実績などの写真から信頼してリフォーム会社等に依頼する方も多いと思いますが、あとどのくらい使えるようなものにしたいのかで施工計画が変わってきます。

設計事務所を開設していて、見た目の意匠を優先するのか、基本の構造体や性能を優先するのかはいつも悩ましいところでもありますが、私自身の考えの中に、やっぱり建物は見えない部分ほど、きちんとしておかないといけないのではないかという思いがあります。
限りある予算のなかで、出来ることは順番に決まって居ますが、リフォームの場合は既存のモノを剥がして見ないと事前の調査ではどうしても予期できなかったことが発生することがあります。
調査で見えない部分は、建て主さんの了承を得て剥がして見ることもあります。
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元々、大壁だったメインのダイニングキッチンは隠れている柱は化粧柱では無いので大壁のまま、リフォームしました。
柱、梁、土台を残し、木曾桧の下見板張り・外断熱・充填断熱・左官(性能、施工上肝心な部分ですが、途中の材などは記載を省略して書いてみました)仕上げ材の左官はガイナで施主施工です。
窓は、断熱ペアガラスに内側に、もう一枚。東北の寒さと結露を防止する為に性能を上げた設計を行いました。元々、冬場や梅雨の季節の結露が酷くて造作材の中にも水が溜りカビや材の劣化に悩んでいた建て主さんです。
このことを解消することがリフォームの目的でもありました。

ダイニングから外に出る掃き出し窓の庇が傷んでいたこと、逆に陽射しを遮って室内が暗過ぎていたこともあり、窓高を高くし隣の庇の高さと同じ位置に同様の意匠で新設しました。

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ソファーや椅子は、カッシーナのショールームにご一緒した際に、ご主人がソファーを。奧様が椅子を。それぞれに選ばれたものに合わせてテーブルを作りました。
テーブルにちょうど最適な幅の材木が職人さんの工場にあったのを発見しました。常々、職人さんの工場にも通って居るとこうした縁に巡り合うものです。木も同じものはひとつとして無いので何事もタイミングだと思います。
後に配置を変えるようなスペースが無いので、テレビボードも造付けにしました。IMGP4365.jpg
撮影中、お嫁さんと一緒にお昼ご飯を作ってくださっていました。
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この季節は筍と生のホヤが食せます。
それに、小女子のじゃこご飯!畑で採れたお野菜も沢山で。
心のこもったお料理を美味しくいただきました。
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お庭には沢山の野に咲く草花がありましたが、奧様がシャクナゲを持ってきてくださいました。
関東では見頃が終わり、我が家の庭でも牡丹が咲き始めた頃で、やはり気候は一か月くらい違います。IMG_9893.jpg
黒蝋梅は茶道をされている奧様が活けたものです。
佇まいによく合った景色。
建築写真家の輿水さんが、この位置から見る長屋門良いね!と。
玄関の入り口と長屋門の入り口が重なるのはお寺さんと同じになってしまうので、民家は位置を振るのが基本ということを奧様から教えていただきました。
長屋門を設計することは、今までは無かったので、こうしたことをお聞き出来るのは本当にありがたいことです。
長屋門の設計してみてよ。面白い用途の長屋門が良いよね!と輿水さん。
そのような機会があればいいな、とは思って居ます。「長屋門」は農機具や農作物、食器やお雛様、調度品などを保管しておくほか、門兵の待機部屋などその家の用途に応じて役割が違います。現代では色んな使い方ができそうですね!
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撮影を終えて、少し車を走らせると田園風景に北上川が広がります。
塩害で復旧することが難しいといわれていた田んぼも元に戻って田植の季節。
コンバインに、何故か海鳥が後をついて行っていますが、土を耕すことで虫やドジョウなど餌となるのが浮いてきているのでしょう。
土木工事で塩抜きの処理を行って綺麗に塩が抜けたと建て主さんからお聞きしました。
米どころの石巻。お米がとても美味しくて。
元に戻って本当に良かったです。
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被害の傷跡は今も残っています。復興も終わったわけではありません。
5年前のことは決して忘れてはいけないことです。
前に少しずつでも進みながら、暮らしも、住まいも将来に生かすことが大切だと思います。
posted by kirara at 18:13| Comment(0) | 設計事務所の仕事